研究奨励事業(小瀧奨励金)

(1)小瀧奨励金の概要

当研究所では、1984(昭和59)年度から、公益事業のひとつとして若手研究者の育成を目的とした研究奨励事業(通称「小瀧奨励金」)を行ってきました。この事業は、故小瀧武夫氏からのご寄付を基金として始められたもので、その後、多数の有志からの寄付も加わり、これまで毎年ほぼ1名、厳正なる審査で選ばれた研究者に対して助成を行ってきました。
小瀧奨励金は、単に奨励金の授与を通じて若手研究者の研究に対して経済的な援助をするだけでなく、この奨励事業の対象者として選考されたことが研究者としての自信につながり、また『林業経済』誌に研究成果が論文として掲載されることから研究業績づくりにも貢献すること等、若手研究者の育成に大いに貢献して来ました。

(2)小瀧奨励金の実施要領

林業経済研究所研究奨励事業実施要領

  1. 趣旨
    林業経済研究を推進するため、新進の研究者等による林業経済研究分野に関する調査研究を奨励することを目的とする。
  2. テーマ
    林業経済研究分野に関する調査研究のすべてとし、内容としては個別論文として完結したものとする。
  3. 助成対象者
    林業経済研究分野の調査研究にたずさわる者で、原則として、大学院生・日本学術振興会特別研究員PD等であり、かつ4-(2)に定める申込時に年齢35歳未満の者とする。
  4. 助成方法
    1. 林業経済研究所は毎年『林業経済』誌等によって助成対象者を公募する。
    2. 応募者は、別に定める様式による林業経済研究所研究奨励事業申込書をその年の4月20日(消印有効)までに提出する。
    3. 林業経済研究所理事長は、応募者より提出された林業経済研究所研究奨励事業申込書に基づいて、助成対象者の候補者選定を5に定める研究奨励委員会に委嘱する。
    4. 林業経済研究所理事会は、研究奨励委員会の審査報告に基づいて助成対象者を決定する。この決定は、7月上旬までに本人に通知するとともに『林業経済』誌等に掲載し、公表する。
    5. 助成対象は原則として毎年1人とし、金額は20万円とする。また『林業経済』誌を1年分贈呈する。
    6. 助成対象者は、その年度の末日までに林業経済研究所に2,000字程度の調査研究要旨を提出し、翌年度の12月末までに調査研究報告書を提出するものとする。報告書の形式は『林業経済』執筆細則に準拠し(助成対象者が筆頭著者であれば共著も可)、分量は30~80枚(400字詰、図表を含む)とする。報告書の提出が1年以上遅れた場合、林業経済研究所は、助成対象者に対し、交付した奨励金の返還を求めることができる。
    7. 報告書の著作権は林業経済研究所に帰属するものとし、助成対象者は報告書に基づく原稿を『林業経済』に投稿することを原則とする。
    8. 助成対象者に事故が生じた場合等、理事長は研究奨励委員会の意見を聴いた上で必要な措置をとり理事会に報告するものとする。
  5. 研究奨励委員会
    1. 本事業を遂行するため研究奨励委員会(以下、委員会と略称)を設ける。
    2. 委員会は、理事長が委嘱した委員(学識経験者7名以内)をもって構成する。
    3. 委員会に委員長をおく。
    4. 委員会は、その運営に関して必要ある場合には別に内規を定めることができる。

これまでの小瀧奨励金助成対象者

第1回(1984年度)
土屋俊幸「観光資本と入会林野」
第2回(1985年度)
上田実「農民的農林複合経営の存立と共有林野利用をめぐる諸問題」
遠藤日雄「民有林における伐出労働組織の機能と再生産構造に関する研究」
第3回(1986年度)
黒瀧秀久「森林組合における事業展開の経済的性格と林野所有に関する研究」
第4回(1987年度)
山之口誠人「林業直接生産者の組織化、協業化問題」
第5回(1988年度)
金義庚「林業経営の税負担及び林業税制の改善に関する研究」
第6回(1989年度)
金世彬「製材品輸入の増加と木材産業の変貌-日本と韓国に関する実証的比較研究」
第7回(1990年度)
権五奎「韓国山林組合の歴史的展開と発展方向に関する研究-日本森林組合との比較通じて」
第8回(1991年度)
山下宏文「小・中学校社会科における『森林・林業』の学習方法・カリキュラムついて」
第9回(1992年度)
脇野博「明治・大正期における森林鉄道導入と在来伐出技術」
第10回(1993年度)
安起完「韓国における森林資源政策の展開と山林組合の役割に関する実証的研究」
立花敏「国産人工林材の木材需給に関する経済学的分析」
第11回(1994年度)
興梠克久「地域林業における生産担当林家層の育成に関する一考察」
第12回(1995年度)
李天送「中国華北平原『農用林業』地域における木材市場構造に関する研究」
第13回(1996年度)
中川恒治「入会林野利用の現状と入会林野整備事業の今日的課題」
第14回(1997年度)
和知達也「林業労働力問題研究の1990年代における展開-その総括と21世紀展望-」
第15回(1998年度)
崔麗華「中国南方集体林地域における木材市場構造に関する研究-福建省および県の事例を中心に-」
第16回(1999年度)
片平修一「サハリン州における林業政策の戦後過程」
2001年度
具滋仁「中国山地における入会共有林野および入会集団の変遷と現状-持続可能農山村のための前提と戦略-」
2003年度
根津基和「集落における社会的結合の今日的意味と動態に関する調査研究」
2004年度
額定其労「遊牧生産方式の変遷とその外的要因の解明に関する研究-中国内モンゴルの事例から-」
2005年度
大地俊介「国有林野の存在が与える地元生活者の主体性への影響について-特に栃木県栗山村の共用林野を対象として」
2006年度
御田成顕「違法伐採の拡大に伴う山村農民層の階層分化に関する研究-インドネシア共和国カリマンタン州を事例として-」
2007年度
川﨑章恵「大規模木材産業の原木調達と林業一人親方の組織化に関する研究-福島県を事例に-」
呉守蓉「高度経済成長下における中国の林業財産権制度の改革に関する研究」
2008年度
星野真有美「地域森林整備における『施業共同化』の合意形成過程に関する考察-群馬県西毛地区の事例を通して-」
2009年度
小川拓哉「岐阜県における市町村合併に伴う森林組合の動向が地域森林管理に与える影響」
2010年度
小松朋代「都市山村交流における森林・林業教育の政策的展開と住民意向に関する研究」
2011年度
荒井紀子「農山村地域における伝統技術の継承に関する研究-漆の生産・流通構造-」
2012年度
赤池慎吾「過疎高齢化地区における家産意識と森林管理に関する比較研究-島根県内4地区を対象として-」
2013年度
尾分達也「木材価格下落時における素材生産事業体の経営戦略と木材流通構造の変容-九州地域を事例に-」
2014年度
梶山雄太「那珂川流域における近世篤林家の山林経営−黒羽藩士興野家文書より−」
2015年度
小坂香織「ニュージーランドにおけるパートナーシップを中心とした造林投資事業の継続性の解明─林業投資会社の企業統治と意思決定─」
2016年度
小杉純「地域社会における狩猟者の行動様式と行政との関係―栃木県粟野川流域・シカ銃猟地域を事例として—」
2017年度
浅井美香(一橋大学大学院経済学研究科ジュニアフェロー(特任講師))「森林経営の持続可能性条件―財産区をめぐる組織間関係に注目して―」
2018年度
TAN JIAZE(筑波大学大学院生命環境科学研究科)「中国における森林率の変化に社会経済要因が与える影響」
2019年度
佐藤 周平(東京農工大学大学院農学府農学専攻地球社会学コース修士課程) 「明治以降の合併を一度も経験していない町村の現代的意義 ─全国的把握と市町村合併政策への対応過程の検証─」
2020年度
岡田 航(神奈川大学人間科学部非常勤助手)「大規模社会変動後の地域におけるコモンズの再生成過程に関する研究」
2021年度
石畑 匡基(高知県立歴史民俗資料館学芸員)「江戸時代初期における幕府の材木需要-土佐山内家による納入材木の規格分析を事例として-」
2022年度
松村 菖(東京農工大学大学院農学府農学専攻地球社会学コース修士課程)「新潟県上越市不動地区における明治から現代に至るまでの民家の維持・更新・消失過程の類型化-集落との関連性にみる建物台帳研究の可能性-」
2023年度
古賀 達也(京都大学大学院農学研究科博士後期課程/京都大学JST奨励研究員)「GHQ占領下における鳥獣行政の政策過程に関する研究」
2024年度
(講評)
平山 和虎(東京大学大学院農学生命科学研究科修士課程)「世界遺産地域を含む山道管理の実態-熊野参詣道伊勢路の管理体系を事例として-」
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